【余談】
1850年,ScotlandのGlasgowにIreland難民の両親の下に,一人の男の子が誕生しました.
難民ですから,当然暮らしは貧しかったのですが,そのうち父親は一生懸命働いて小金を貯め,小さな食料品店を開きました.
その中で育った男の子は,嬉々として商品を並べ,売ったりする事に興味を示します.
或時,彼が卵を客に売っていた親父に言いました.「オカンにタマゴ売りをやらせたらええんちゃうん.オカンの手は小っさいから,タマゴが大きく見えるやん」(Ireland人なので大阪弁でお送りしております)
成る程と考えた親父も偉い.
こうして,彼も商売の手伝いをする事になりました.彼が店に立つ時には,Scotland人にはScotland語で話しかけ,Ireland人にはIreland語で話しかける事で,客の信頼を勝ち取っていきます.
誰しも,自分の育った国言葉で話しかけられるのは心地良いものですから.こうして商売のイロハを学んだ彼は,更に学校に通う為,近所の文具店で働き,その給料を学資に充てました.
やがて文具店を辞め,給料のもっと高いシャツを作る店に転職し,売込み用の生地の見本帳を作成する仕事を始めます.13歳の時,毎日憧れて通っていた港で,大型帆船の進水を見て一大決心をし,両親を説き伏せて,蒸気船のキャビンボーイに転職しました.
週給は8シリングと,結構賃金が高かったのも魅力でした.
そんなある日,15歳になったばかりの頃,港にNew York行きの船を見かけます.
船賃18ドルは,今まで蓄えたお金で支払い,残りは8ドルしかありませんでした.
それでも,彼は新大陸に一歩を記したのでした.この時,彼は信用出来そうなIreland訛りの男を見つけ,こう持ちかけます.
「あんさん,船ん中にわての知り合いがぎょうさん居てまんねん.紹介したら礼してくれへんか?」
「よっしゃ,ほんまに10人以上連れて来れたら1週間宿代は只にしたる!」
これが米国に於ける彼の最初の仕事でした.1865年の事,当時は南北戦争終結直後で経済状況が悪化していましたが,それでも彼は持ち前の才覚で,Virginiaのタバコ農園で働き,後にSouth Carolinaの農園で運転手になるなど,3年間,ひたすら働き続けました.
そして3年後,New Yorkの百貨店の食料品売り場で働く口を見つけます.
彼は水を得た魚の様に働き,仕事熱心で昇進も早く,このまま続けるとその百貨店でも経営者に成る事も出来たかも知れません.
しかし19歳になると,彼はあっさりその地位を投げ捨て,再びGlasgowに帰って行きます.Glasgowに戻った彼は,直ぐに新しい荷馬車を準備し,両側に店の名前を入れ,それに乗って帰宅しました.
荷台には,母親の為に一樽の小麦粉とロッキングチェアが載っており,懐には商売資金の500ドルが忍ばせてありました.21歳の誕生日に,彼は親父から独立して自分の食料品店を持ちました.
扱い品は,父の店と同じくチーズ,ハム,ベーコン,バター,卵と言ったIrelandの産物で,店員は彼と手伝いの少年,それに猫1匹でした.彼は宣伝の才に長けていました.
彼のモットーは,「商売は身体と宣伝が資本である」と言うもの.
店に掲示板を掲げ,地方新聞の連載漫画や面白い絵,値札もスマートなものを造り出します.例えば,店頭にペンキで描いた大きなハムの看板を掲げます.
これが夏になると暑さでペンキが滲んで柔らかくなり,さも脂がのった本物のハムに見える様に工夫したり.
はたまた,一頭の泣いている豚を背負っているIreland人の絵を描き,Ireland人の台詞に,「このブタ,身寄りがおらんねんて.で,家族は全部彼の店にいるんやて.可哀想やさかい,わてが連れて行ってやりますねん.」…非常にブラックユーモアというか何というか.その広告が評判を呼ぶと,今度は良く太った2頭の豚のしっぽにリボンを結び,脇腹には「○○屋の孤児」と大きく書いた旗を立てて,2人のIreland人の格好をした男達と共に,町中を練り歩きました.
彼らは,警察署の前にだけは行くなと厳命されていましたが,人混みと豚の力に負けて,警官の目に付いてしまい,人集りによって,荷馬車が通行出来なくなって遂に警官の出動と相成ってしまいました.
当然,警察からは大目玉を食らったのですが,この事件は新聞に書き立てられ,更にこの店は有名になってしまいました.彼は更に宣伝の方法を考えます.
店の入口に凸面鏡,出口に凹面鏡を置いて,入口の鏡に「私は○○の店に入る」と書いておいて,凸面鏡の効果で客の姿は細長く痩せて見える様に,出口の鏡には「私は○○の店から出て来た」と書いてあって,凹面鏡の効果で客の姿は健康的に太って見える.
当時は,痩せは不健康だと思われていたので,この効果は絶大でした.
更に,彼は太った若い女性を何人も雇い,「私は○○の店で買い物をします」という駕籠を持たせて町中を歩かせ,彼の店で食品を買うと健康的になると言うイメージを大衆に植え付ける事に成功しました.27歳になると,益々彼の才能は溢れ出て,終にはScotlandの大銀行が出している1ポンド紙幣と同じ大きさ,デザインそっくりの紙幣をも出してしまいます.
王室の紋章の下に店の名前が書かれ,発行者の名前も彼の名前でした.
その紙幣には,「Ireland産のハムとバター,卵の市場.私の経営する店は何処でも,ハムとバターに関しては15シリングで提供出来る」と書かれていました.
当時,ハムとバターを他の店で買うと1ポンドはしたので,これは大幅な値引き広告.
しかも,1ポンド紙幣と同じデザイン,大きさで,他店を皮肉ると言う事まで遣って退けました.1880年代になると,彼の店の名物は,Christmasに作る「チーズのお化け」でした.
彼は作る前から,
「雌牛800頭6日分の牛乳で作ったチーズ.乳搾りの女性の数は20人」
と前宣伝を仕掛け,更にこのチーズには金貨を沢山入れて,その現場を大衆に公開しました.
これをカットした日には,あっと言う間にチーズは売り切れになってしまいます.「チーズの中に金貨を入れるのは違法」
と言われると,ビラでこう告知しました.
「チーズからもしも金貨が出て来たら,私の店にお返し下さい」.「もし金貨を飲み込んだら死んでしまう.販売を中止しろ」
と警察から指導が来たら,
「私の店のチーズには金貨が入っていて,飲み込むと窒息する危険があります」
と言う,警察からのご注意と言う広告を新聞に出し,更にチーズは売れるという結果を生みだしました.彼の考えはこうでした.
「御店が2店になったら,利益は2倍や.御店の数が増えるだけ利益は増える」
その考え通り,1号店開店から3年目に2号店が出来,半年後には3号店が出来ました.
そして10年後には,店の数は20軒以上となり,800人以上の従業員を雇う一大企業に成長していました.
因みに彼の座右の銘は,
「商売ほど楽しいものは他にない」
ですが,もう一つ,鉄則にしているものもありました.
「生産物は問屋からではなく,作っている人から直接購入する」
です.
直接仕入れる事で,新鮮さは失われる事がありません.
しかも,良品か否かは自分の目で確かめる事が出来ます.
こうして彼は,Irelandに出かけて農産物を仕入れた他,米国から大量のベーコンを,Denmarkからは質の良いバターを仕入れたのです.その彼の名前ですか?
彼の名前はThomas Lipton.
今,日本人でも誰でも知っている,あの黄色いTea bagと赤字に白抜き文字のブランドの人です.
Like A Cat Tied To A Stick
So,a dream cheerfully kill itself every moment.
http://tmv.proto.jp/#!/leak225
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2012-02-07
出典: petapeta
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